WordPressでECサイトは作れる?WooCommerceの可能性と限界
 
													「既存のWordPressサイトにネットショップ機能を追加したい」「自社でECサイトを始めたいけど、WordPressで可能なの?」という相談を、福岡の企業からよく受けます。結論から言えば、WordPressでECサイトは作れます。しかし、すべてのECサイトに最適というわけではありません。
この記事では、WordPressでECサイトを構築する際に使う「WooCommerce」というプラグインの機能、Shopifyや楽天とのECサイト比較、メリット・デメリット、どんな企業のECサイトに向いているかを詳しく解説します。
Table of Contents
WordPressでECサイトを作る方法|WooCommerceとは
WooCommerceの基本
WooCommerceは、WordPressにECサイト機能を追加するための無料プラグインです。世界中で数百万のオンラインショップがWooCommerceを使っており、WordPressでECサイトを作る場合の事実上の標準となっています。
このプラグインをWordPressにインストールするだけで、既存のサイトにショッピングカート機能、商品管理、在庫管理、決済機能などのECサイト機能を追加できます。つまり、会社のコーポレートサイトとオンラインショップを一つのWordPressサイトで実現できるのです。
福岡の企業でも、もともと持っていたWordPress企業サイトに、後からWooCommerceを追加してECサイトを始めたケースが増えています。
無料で使えるが、ECサイト運営にはすべてが無料ではない
WooCommerce本体は無料ですが、実際にECサイトを運営するには追加費用が必要です。
決済手数料は避けられません。クレジットカード決済をECサイトに導入する場合、決済代行会社に3パーセントから5パーセント程度の手数料を支払います。送料計算や税金計算を自動化する拡張機能、定期購入(サブスクリプション)機能、会員ランク機能などは有料の拡張プラグインが必要になることもあります。
また、ECサイト用の商品写真の撮影や加工、商品説明文の作成なども、プロに依頼すれば当然費用がかかります。
WooCommerceでできること・できないこと
WordPressのWooCommerceでできること
WooCommerceは基本的なECサイト機能を一通り備えています。
商品管理では、商品名、価格、在庫数、商品画像、説明文などをWordPressで登録できます。商品のバリエーション(色違い、サイズ違いなど)にも対応しています。カテゴリー分けやタグ付けで、お客様がECサイトで商品を探しやすくする工夫も可能です。
ショッピングカート機能は、お客様が商品をカートに入れて、まとめて購入する標準的なECサイト機能です。カート内容の変更や削除も簡単にできます。
決済機能として、クレジットカード決済、銀行振込、代金引換、コンビニ決済などにECサイトで対応できます。決済代行会社のサービスと連携することで、安全な決済を実現します。
配送設定では、送料の設定、配送方法の選択、配送先ごとの送料計算などがECサイトでできます。全国一律500円、5000円以上で送料無料、といった設定も可能です。
在庫管理機能で、商品が売れると自動的に在庫数が減り、在庫がゼロになると「売り切れ」表示になります。在庫が少なくなったら通知を受け取る設定もWordPressでできます。
注文管理では、WordPress管理画面から注文の一覧を確認でき、注文ステータス(未処理、処理中、発送済みなど)を管理できます。お客様にメールで自動通知を送るECサイト機能もあります。
クーポン機能で、割引コードを発行して、特定の条件でECサイトで割引を適用できます。新規会員限定、期間限定、特定商品限定など、柔軟な設定が可能です。
顧客管理として、購入履歴や顧客情報をWordPressで管理できます。リピーター向けのマーケティング施策にも活用できます。
WordPressのWooCommerceで難しいこと
一方、以下のようなECサイト機能は、WooCommerceだけでは実現が難しいか、追加開発が必要になります。
複雑な在庫管理、たとえば複数の倉庫での在庫管理や、セット商品の在庫連動などは、標準機能では対応できません。高度な配送管理、たとえば複数の配送業者との自動連携や、リアルタイムの配送料金計算なども、追加開発が必要です。
大規模なモール型ECサイト、つまり複数の出店者が出品できるようなプラットフォームを作るのは、WordPressだけでは困難です。また、基幹システムとの複雑な連携、リアルタイム性が求められるシステムなども、専用のシステム開発が必要になるでしょう。
WordPress(WooCommerce)vs Shopify vs 楽天のECサイト比較
ECサイトを始める方法は、WordPress以外にもあります。主要な選択肢を比較してみましょう。
初期費用と月額費用
WordPressとWooCommerceの組み合わせは、プラグイン自体は無料ですが、ECサイト制作費用として30万円から100万円程度かかります。月額費用はサーバー代と保守費用で1万円から3万円程度です。
ShopifyはECサイトの初期費用がほとんどかからず、月額費用は3,000円から3万円程度のプランがあります。すぐにECサイトを始められるのが魅力です。
楽天市場は出店料として初期費用6万円、月額費用2万円から10万円程度と、ECサイトとしては比較的高めです。ただし楽天というブランド力と集客力が得られます。
ECサイトのカスタマイズの自由度
WordPressとWooCommerceは、ECサイトのカスタマイズの自由度が非常に高いです。デザインも機能も、予算と技術力があれば自由に変更できます。自社のブランドイメージをECサイトに完全に反映させることも可能です。
ShopifyもECサイトとしてある程度のカスタマイズは可能ですが、WordPressほどの自由度はありません。用意されているテーマとアプリの範囲内でのECサイト調整が基本です。
楽天市場は、楽天のプラットフォーム内でのECサイトデザインになるため、自由度は最も低いです。他の出店者と似た雰囲気になりがちです。
ECサイトの集客力
WordPressとWooCommerceは、自社ECサイトなので集客はすべて自分で行う必要があります。SEO対策、Web広告、SNS運用など、ECサイト集客の仕組みを自ら構築しなければなりません。
ShopifyもECサイトとして同様に、集客は自社で行います。ただしShopify自体がSNSとの連携機能を豊富に持っているため、インスタグラムやフェイスブックからのECサイト販売はしやすいです。
楽天市場は、楽天という巨大なプラットフォームに既に多くのお客様がいるため、ECサイトとしての集客力は圧倒的です。楽天内で検索されれば、比較的簡単に商品を見つけてもらえます。
決済手数料
WordPressとWooCommerceは、決済代行会社との契約次第ですが、ECサイトで3パーセントから5パーセント程度が一般的です。
ShopifyはECサイトで、Shopifyペイメントを使えば手数料は3.4パーセント程度、外部決済サービスを使うと追加で手数料がかかります。
楽天市場は、月額費用に加えてECサイトの売上の2パーセントから7パーセント程度のシステム利用料がかかります。
データの所有権
WordPressとWooCommerceは、ECサイトのすべてのデータが自社のものです。顧客情報も商品情報も、自由に管理できます。
ShopifyもECサイトのデータを基本的には自由に扱えますが、プラットフォーム上にデータがある形です。
楽天市場は、顧客データが楽天に属するため、他のECサイトプラットフォームへの移行は困難です。
WordPressでECサイトを作るメリット
メリット1:既存のWordPressサイトと統合できる
すでにWordPressで企業サイトを持っている場合、同じサイト内にECサイト機能を追加できます。お客様にとっては、会社情報を見てからECサイトで商品を購入する、という自然な導線が作れます。
福岡のある食品メーカーは、もともと企業サイトをWordPressで運営していました。後からWooCommerceを追加して、自社商品のECサイト通販を始めたところ、企業ブログで商品の背景や作り手のこだわりを伝えることで、売上が伸びたそうです。
メリット2:コンテンツマーケティングと相性が良い
WordPressは本来ブログシステムとして開発されたため、コンテンツ管理が得意です。ECサイトで商品を売るだけでなく、商品に関連する情報や使い方、お客様の声などを発信しやすいです。
福岡の化粧品販売会社は、WordPressでECサイトを運営しながら、週に2回から3回、美容に関するブログ記事を投稿しています。記事からECサイトの商品ページへの導線を作ることで、SEOでの集客と売上アップを同時に実現しています。
メリット3:初期費用を抑えられる
ShopifyはECサイトの月額費用が安く見えますが、長期的に見るとコストがかさみます。月額3万円のプランを5年間使うと、総額180万円になります。
WordPressとWooCommerceなら、ECサイトの初期費用は50万円から100万円程度かかりますが、その後の月額費用は1万円から2万円程度です。5年間で総額100万円から150万円程度で済みます。長期的に見れば、ECサイトとしてコストパフォーマンスが高いのです。
メリット4:自社の資産になる
WordPressで構築したECサイトは、完全に自社の資産です。顧客データも商品データも、すべて自社で管理できます。
プラットフォームに依存していると、サービスの料金改定やルール変更に振り回されるリスクがあります。自社でシステムを持っていれば、そうしたリスクから解放されます。
メリット5:自由にカスタマイズできる
ビジネスの成長に合わせて、ECサイトの機能を追加したり変更したりできます。定期購入(サブスクリプション)を始めたい、会員ランク制度をECサイトに導入したい、といった要望にも柔軟に対応できます。
福岡の健康食品会社は、最初はシンプルなECサイトとしてWordPressでスタートしましたが、顧客の要望を受けて、1年後に定期購入機能をECサイトに追加しました。WordPressならではの拡張性のおかげで、システムを一から作り直す必要がなかったそうです。
WordPressでECサイトを作るデメリット・リスク
デメリット1:構築に時間とコストがかかる
ShopifyならECサイトを数日で始められますが、WordPressとWooCommerceでECサイトを構築する場合、2ヶ月から3ヶ月はかかります。費用も30万円から100万円程度必要です。
すぐにでもネット販売を始めたい、という場合には向いていません。
デメリット2:技術的な知識が必要
WooCommerceのECサイト設定は、WordPress本体の設定より複雑です。決済方法、配送設定、税金計算など、細かいECサイト設定項目が多く、初心者には難しく感じるかもしれません。
制作会社にECサイトの初期設定を依頼するとしても、運用していく中で設定変更が必要になることもあります。社内にある程度のITリテラシーがある人がいないと、ECサイト運用が大変です。
デメリット3:自分でECサイト集客しなければならない
楽天市場のような集客力はありません。SEO対策、Web広告、SNS運用など、自分でECサイト集客の仕組みを作らなければお客様は来ません。
福岡のある雑貨店は、WordPressでECサイトを開設しましたが、最初の3ヶ月はほとんど売上がありませんでした。Web広告を始めて、インスタグラムでの情報発信を強化したところ、徐々にECサイトで注文が入るようになったそうです。「ECサイトを作っただけでは売れないことを実感した」と店主は語っています。
デメリット4:セキュリティリスク
ECサイトは顧客のクレジットカード情報や個人情報を扱うため、セキュリティ対策が非常に重要です。WordPressは狙われやすいシステムでもあるため、ECサイトとして万全の対策が必要です。
SSL化はもちろん、定期的なWordPressアップデート、セキュリティプラグインの導入、バックアップの取得など、継続的な保守が欠かせません。この点はShopifyのようなECサイト専門プラットフォームの方が安心です。
デメリット5:決済手数料以外にもECサイト費用がかかる
決済代行会社への月額費用、サーバー代、セキュリティ対策費用、保守費用など、ECサイトのランニングコストがそれなりにかかります。月額2万円から3万円程度は見ておく必要があります。
商品数が少ない小規模なECサイトの場合、費用対効果が合わないこともあります。
WordPressのECサイトが向いている福岡企業
どんな企業がWordPressとWooCommerceでECサイトを作るべきでしょうか。
既存のWordPressサイトがある企業
すでにWordPressで企業サイトを運営していて、そこにECサイト機能を追加したい場合は、WooCommerceが最適です。別々のシステムを使うより、一つに統合した方が管理も楽です。
コンテンツマーケティングに力を入れたいECサイト運営企業
商品を売るだけでなく、ブログやコラムで情報発信をして、SEOで集客したいECサイト運営企業に向いています。記事からECサイトの商品ページへの導線を作りやすいのがWordPressの強みです。
福岡の工芸品店は、作家のインタビュー記事や商品の製作過程を紹介するブログをWordPressで充実させることで、「福岡 伝統工芸」などのキーワードで上位表示され、全国からECサイトにお客様を集めています。
独自のブランドを確立したいECサイト運営企業
楽天やAmazonに出店すると、どうしても価格競争に巻き込まれがちです。自社のブランドストーリーや世界観を大切にしたいECサイト運営企業は、自社サイトで販売する方が適しています。
WordPressなら、ECサイトのデザインも機能も自由にカスタマイズできるため、ブランドイメージをしっかり表現できます。
長期的にECサイトを運営する予定の企業
初期投資は必要ですが、長期的に見ればコストパフォーマンスが高いです。5年、10年と継続的にECサイトを運営する予定なら、WordPressで自社の資産として構築する価値があります。
ある程度の予算と時間があるECサイト構築企業
初期費用として50万円から100万円、構築期間として2ヶ月から3ヶ月を確保できる企業にWordPressのECサイトは向いています。予算も時間もない場合は、まずShopifyでECサイトを始めて、後からWordPressに移行する段階的なアプローチも検討しましょう。
WordPressのECサイトが向いていない福岡企業
逆に、以下のような企業にはWordPressとWooCommerceのECサイトは向いていません。
すぐにでもECサイト販売を始めたい企業
今月中にネット販売を始めたい、といった急ぎの場合は、ShopifyのECサイトの方が現実的です。テンプレートを選んで商品を登録すれば、数日でECサイトを始められます。
技術的な知識が全くない企業
社内にパソコンの操作に詳しい人が誰もいない、制作会社のサポートも受けられない、という場合は、WordPressのECサイト運用は難しいかもしれません。ShopifyのようなシンプルなECサイトシステムの方が安心です。
初期投資を抑えたいECサイト運営企業
初期費用を10万円以内に抑えたい、という場合は、WordPressは選択肢から外れます。Shopifyやネットショップ作成サービスでECサイトを検討しましょう。
大量の注文をさばく必要があるECサイト運営企業
1日に数百件、数千件の注文が入るような大規模なECサイトの場合、WordPressでは処理速度やサーバー負荷の面で限界があります。専用のECサイトプラットフォームや独自システムの開発を検討すべきです。
まとめ:目的に合わせてECサイトを選択しよう
WordPressとWooCommerceでECサイトを作ることは十分に可能です。既存のWordPressサイトにECサイト機能を追加できる、コンテンツマーケティングと相性が良い、長期的にはコストパフォーマンスが高い、自社の資産になる、自由にカスタマイズできる、といったECサイトのメリットがあります。
一方で、構築に時間とコストがかかる、技術的な知識が必要、自分でECサイト集客しなければならない、セキュリティリスクに注意が必要、といったデメリットもあります。
既存のWordPressサイトがある企業、コンテンツマーケティングに力を入れたいECサイト運営企業、独自ブランドを確立したいECサイト運営企業、長期的にECサイトを運営する予定の企業、ある程度の予算と時間があるECサイト構築企業には、WordPressとWooCommerceが向いています。
すぐにECサイト販売を始めたい企業、技術的な知識が全くない企業、初期投資を抑えたいECサイト運営企業には、ShopifyやBASEといった他のECサイトプラットフォームの方が適しているかもしれません。
福岡でECサイトを始めたい企業は、まず自社の目的、予算、スケジュール、技術力を整理した上で、制作会社に相談してみましょう。WordPressが最適なのか、それとも別のECサイトプラットフォームの方がいいのか、プロの意見を聞いて判断してください。ECサイトは始めることよりも、続けることの方が大切です。自社に合ったシステムを選んで、長く成功するオンラインビジネスを構築しましょう。
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